男兄弟2人でベトナム縦断1か月の旅（３）夜行列車で着いたニャチャンでは、丘の上に建つ白亜のバオ・ダイ帝の別荘に泊まり、美しい海で遊ぶ。

2002/05/07 - 2002/06/05

ホーチミンとメコンデルタの1週間とカンボジアの1週間の旅の後にサイゴン駅から夜行列車でニャチャンへ移動しました。当初は統一鉄道全線踏破を考えていましたが、エアコンの無い列車は窓全開で疾走するもものすごい数の虫が飛び込んできて寝られたものでは無く、以降は予定変更してシンカフェのツーリストバスに変更しました。早朝のニャチャン駅からタクシーでバオダイ帝の別荘だったホテルに向かいます。普通海岸沿いのリゾートホテルん泊まるのがニャチャンの楽しみ方ですが、町の南側の漁村の先にある岬の高台に阮朝のバオ・ダイ帝の別荘があるのです。それが当時1泊3,400円というお値段でした。朝食は見晴らしの良いレストランでいただけます。皇帝の別荘の中の一つのビラがあてがわれるのですが、プライベートビーチもあったりして面白い滞在でした。ここではシンカフェのオフィスでホイアン行のバスを予約するとともに、3つの島を巡るボートツアーと、チャンパの遺跡と川を遡るボートツアーにも申し込みしました。川を遡るツアーは弟は参加せず一人だけだったのですが、迎えに来たのはホンダカブに乗った女の子でした。その子の運転するバイクにタンデムでニャチャンの海岸沿いを走るのは気持ち良かったです。またその子がすごい美人でもありました。バイクを降りると船着き場で、なんとツアーはたった一人だけでした。ボートのおじさんとその女の子と3人で一日観光は最高に楽しかったです。3つの島巡りのボートトリップも海で泳ぎながらお酒を飲んだりとまた違った楽しさがありました。ホテルから町中に食事に出るのは少し面倒でしたが、面白い経験でした。最終日は夜行バスに乗る前に海岸で寛ぎましたが、ドリンクの安さと、エビカニを天秤棒で売り歩くおばちゃんにサービスしてもらったエビカニは最高に美味しかったです。

エリア ニャチャン(ベトナム)

• 旅行の満足度: 4.5
• 観光: 5.0
• ホテル: 4.0
• グルメ: 4.0
• ショッピング: 3.0
• 交通: 4.0

• 同行者: 家族旅行
• 一人あたり費用: 25万円 - 30万円
• 交通手段: 鉄道 高速・路線バス バイク
• 航空会社: ベトナム航空
• 旅行の手配内容: 個別手配

旅行社に列車の寝台チケット手配を頼んで、カンボジアから戻ってチケットを受取ったら１枚当たり５ドル以上のコミッションを取られていました。チケットの料金もロンリープラネットに記載された金額よりも安いです。どうやら地元金額で購入して外国人値段+手数料で商売しているようです。

夕方になってホテルからタクシーでサイゴン駅に向かいます。楽しかったホーチミンの旅も終わりました。家具も買ったし、念願のアンティークの陶器も買えたし思い残すことはありません。カンボジアの旅も無事終わりました。

夕方の鉄道駅は少し寂しい感じがします。もっと混雑しているのかと思ったのですが閑散としたイメージです。

列車は４人コンパートメントでした。同室は文（ベン）君という28才の公務員でした。週末をニャチャンの友人の所で過ごすとの事でしたが、彼の持っていたチケットは更に金額が安く、この国の料金体系がまた分からなくなりました。

コンパートメントには扇風機しか無くて蒸し暑いので窓を全開していましたが、窓の金網の隙間から甲虫がたくさん飛び込んできてとても快適な寝台列車とは思えませんでした。当初はハノイまで列車でと思っていましたが、料金も安いシンカフェのツーリストバスに変えようと思いました。

夜明け前のニャチャン駅に到着しました。東の空が薄っすらピンク色になってきました。

駅の正面にはニャチャンの大聖堂が見えました。改札も無いので思い思いに乗客は散っていきます。

あっという間に誰もいなくなりました。

残ったのは鉄道員の方だけです。駅前からタクシーに乗って宿泊するバオダイ・ヴィラに向かってもらいます。海岸線に出て南下しますが、延々と伸びる公園では物凄い人が体操したり、太極拳をしたり凧揚げをしています。

早朝にもかかわらずホテルではすぐにチェックインさせてもらえました。夜行列車ではよく眠れなかったので、10時くらいまで寝ることにします。

ニャチャンの南の外れの岬の高台に建つバオダイ帝の別荘にはプライベートビーチがありました。この当時はニャチャンの北側のリゾートなどは無かったと思います。

プライベートビーチのレストランです。お客もいませんが店の人もどこかで休んでいていません。

フォーとビールを飲んで一人15,000ドンくらいでした。海の家では麺類が美味しいですね。

一応プライベートビーチですが、泳いでいるのは地元の中学生の女の子たちだけです。

どこの国でも女の子たちは元気です。

中学校の制服のまま泳いでいました。

デッキチェアで微睡みながら波の音と女の子たちの笑い声を聞いていました。

手入れの行き届いたビーチとは言えませんが、1泊１部屋6,400円で朝食付なので贅沢は言えません。

一応いろいろなアクティビティがあるようでしたが、お客は我々以外は皆無でした。目の前を行き交う船は全部漁船です。

ホテルと言っても写真のようなヴィラが数棟あって、１棟が2部屋から３部屋に分かれているようでした。眺めの良い２階の広い部屋でしたが、他の部屋も空いていたので表の木にロープを張って、兄弟で大洗濯大会を催しました。

プルメリアがきれいに咲いていました。

白亜の建物がバオ・ダイ帝の別荘なのだと思います。この母屋では朝ごはんを食べるだけでした。保大（バオ・ダイ）は阮朝大南国の第13代にして最後の皇帝（在位：1926年1月8日 - 1945年3月11日）、ラスト・エンペラーです。阮（グエン）朝の皇帝についてはこの先のフエの旅でいろいろ学ぶことになります。

近くには運動場があり子供たちが楽しそうに過ごしています。この時期学校は終わって夏休みだと思ったのですが。

ホテルのある岬の北側には漁村があったので遊びに行ってみました。

高床の掘立小屋のような漁師さんの家を抜けていくと海岸にでます。子供たちがたくさんいて楽しそうに遊んでいます。

普通こんな住宅地のそばでは水も汚れそうですがとても綺麗でした。

子供が遊ぶ間を漁師さんたちが出掛けていきます。

多分このバオ・ダイ・ヴィラに泊まらない限りニャチャンビーチの南にはこないので、観光客など行かないところだと思いますがとても良い所でした。

どの子も泳ぎが上手です。

メコンデルタとは違った面白さを感じます。

ボートで通り過ぎるだけではなく、近い位置で話も出来ます。

お兄ちゃんの籠ボートに乗って行ってしまいました。

男の子たちはもっとワイルドです。漁船に登っていきます。

沖では漁師さんが出港の準備をしています。この沖合で最近は中国といざこざがあるようです。

子供たちは楽しそうに遊び、カメラを向けるといろいろな技を見せてくれました。

メコンデルタの木造船とは違った切れ長な眼をした顔をしています。

映画の「スタンド・バイ・ミー」みたいな感じです。

この漁師のおじさんは何とも味のあるタバコの吸い方をするなと関心しました。

この子たちも大きくなったら漁師になるのでしょうか？

フェニシアンアイと呼ばれる帆先の目の装飾を施した地中海のマルタ島のルッツという漁船と良く似ているなと思いました。

漁村で楽しい時間を過ごしていたら日も暮れてきました。午後になってタクシーが来て日本人の男性がトランクを持って降りてきました。少し話をして、夕方に町中まで食事を食べに行くことにしました。

タクシーで海岸線まで出るとすごい人出だったので、少し歩いてみます。この時間になると夕涼みに来るようです。

凧揚げも盛んなようです。最近は仲が悪いですが中国もベトナムも似た文化を持っています。

3人でビールを飲みながら七輪で焼き肉を食べました。歩道に椅子と七輪を置いただけの店とは言えないようなところですが美味しかったです。

翌朝目が覚めてしまったので敷地の中を少し歩いていると、朝日が出てきたのでしばらく眺めていました。

鏡のような水面を漁船が切り裂いていきます。

ニャチャンの沖合のホンチュー島の向こうから太陽が昇ってきます。

今日も暑くなりそうです。

漁村にも夜明けが来ました。

カラフルな漁船に朝日が当たってきれいです。

昨日元気に遊んでいた子供たちもまだ寝ているのでしょうね。

何てことない漁村の風景ですが心に沁みるものがあります。

この風景もどんどん変わっていくのでしょう。

この旅の後も何度もベトナムを旅していますが、ニャチャンダだけは再訪していません。

今度はホーチミン経由でニャチャンだけの旅でも計画してみようと思います。

音楽を聴きながらしばらく景色を眺めていました。

ホーチミンでは見掛けなかった火炎樹が赤い花をつけていました。これだけでスリー・シーズン「季節の中で」という映画を思い出します。

朝ごはんを食べた後はホテルのカウンターでお願いしたエクスカーションのピックアップを待ちます。

この日は４島巡りのクルーズツアーに参加しました。１人7ドルでした。ムン島沖で1時間半のシュノーケリングを楽しんでモッ島沖で昼食です。

食後はまたシュノーケリングしているとスタッフが浮き輪で作ったバーを持って泳いで来てフリードリンクタイムになります。

泳ぎながらお酒と思うかもしれませんが、そのうちに各国対抗アカペラ歌合戦になってとても楽しかったです。

しばらくはボートの屋根の上で日光浴です。

すぐ横にはベトナム海軍かコーストガードの船が停泊していました。武器も搭載していますがこれでは中国の巡視艇や艦船に負けちゃいますね。この辺りは中国とベトナムが領海を争っている場所に近いです。

ダイビングを楽しむ人も多かったです。ニャチャンやホイアンの沖の島は有名なダイビングスポットのようです。

お昼は料金に含まれていましたが、オプションでウニを販売していました。大好きなので食べていると彼女は興味津々でした。少し上げましたが口には合わなかったようです。生まれて初めて食べたと言っていました。

この都市になって弟と二人で旅するとは思いませんでした。それもこんな小学生の夏休みのような旅を…。

3番目のタム島は上陸してシーカヤックに挑戦するも横波をくらって転覆してしまいました。ポケットのお金が流れ出てしまいましたが、岸から４～５人の人が慌てて助けに来てくれ、流れ出たお金も全部回収してくれました。でも、写るんですの水中カメラは流されてしまいました。

この時のリベンジはハロン湾で妻とシーカヤックを楽しみましたが、楽しかったのは私だけのようでした。

桟橋で子供たちとしばらく遊んでいました。

壊れたおもちゃのように何度も何度も飛び込みを繰り返していました。

この当時はフィルムカメラなのでうまく写っているか分からないので何枚も撮っていました。

ようやく思っていたような写真が撮れました。

子供に戻ったような楽しい一日でした。

翌日は12ドルのリバーツアーを申し込んでいました。弟はホテルでゆっくりすると言って申し込んでいませんでした。ホテルのフロント棟で待っていると現れたのはバイクに乗った女の子がやってきました。今日はお客が一人なので自分で迎えに来たとの事でした。「さあ後ろに乗って。」と言われるままにバイクにタンデムでシーサイドドライブです。バイクはムンさんの私物で50キロ離れた村から毎日通っているとのことでした。

このまま二人でドライブだけでもいいかなと思いましたが、住宅地の中に入ったところでドライブは終わりでした。ここでボートに乗ってツアーが始まります。

まずはカイ川を海岸線まで下ります。前日から見慣れた漁船の間を通り抜けていきます。

おばさんたちはどこに行っても元気です。

カイ川の河口は大きな漁港でもありました。

逆光にシルエットになったおばさんは絵になります。

どんなおばさんでもかっこよくなるので、編み笠のノンラーは最強です。

リバークルーズと言いながら最初は海に出て、有名な竹籠の船を造っているおじいさんの工房を見学しました。

竹を編むのに２日から３日かかり、牛糞を塗り固めて乾かして１週間で出来るそうです。400ドルで売ると言っていましたが実際はいくらかは分かりません。オーストラリア人の観光客が買っていったと言っていました。絶対にその人は税関で牛糞の説明をしていないと思いました。

こうやって見ると綺麗ですが茶色いのは牛糞です。この竹籠ボートはトゥエントゥン(Thuyen Thung)と呼ばれます。

このボートにはいつか乗りたいと思っていたのですが、15年後のフエとホイアンの旅で思う存分乗ることが出来ました。

こんなうまく漕げません。素人だとクルクル廻ってしまいます。

いつか佐渡島でたらい船に乗ってみたいと思っているのですがまだ願いは叶っていません。

川辺は生活感が満載です。子供だけでボートを操り釣りをしていました。

ポーナガール遺跡が見えてきました。「ポーナガール遺跡（Po Nagar）」は、かつてチャンパ王国を築いたチャム族が建設した遺跡群です。
小高い丘の上にそびえ立つ遺跡群は、チャム族の神話に出てくる女神ポーナガールを祀る祭壇として、8世紀頃から建設が始まったとされています。世界遺産になっているホイアン郊外の「ミーソン聖域」を始めとするチャンパ王国の数多くの遺跡が歴史の中に忘れ去られていったのに対し、ここポーナガール遺跡は今なお人々の信仰を集める非常に珍しい「生きた遺跡」です。

ここでボートを降りて遺跡の見学をします。

祠堂は全部で5つあるようですが、修復している物もありました。遺跡と呼ばれながら現在も信仰の対象なのでお参りに来ている方がいらっしゃいました。

主祠堂です。

入り口の破風には艷やかに踊るシヴァ神の妻であるウマー像（パールヴァティー）が見られます。女神ポーナガールはヒンドゥー教のシヴァ神の妻であるウマー神と同一視されています。

ボーナーガルの丘の上から景色を眺めると隆山寺（ロンソン寺）の白い大仏が見えました。

ボートに戻ってここからがボートクルーズです。あまりに美しい景色に驚かされます。

水面から見ているとあまりの華奢な橋に心配になってしまいます。

川舟はまた違った形をしています。

メコンデルタのクルーズとはまた違った雰囲気です。何より川の水の色が違います。

ボートは川を遡りながらジャングルの中の民家でお茶とお菓子をご馳走になったり、ココナッツ農園にも立ち寄りました。

下で待っていると男の子が何も使わずに椰子の木に登っていきます。

そして熟れた実を探して落としてくれます。

またするすると手慣れた技で降りてきます。冷えてはいませんが美味しいココナッツジュースをいただきました。

ここでは椰子の木に直接ガイシを取り付けて、電柱の代わりにしていました。

木製の華奢な橋ですが、地元の人にとっては大切な生活道路なのでしょう。

どこを切り取っても絵になります。

流されてもすぐに修理できるのでしょうね。でも近い将来は無くなってしまいそうです。

次は陶芸の工房を見学します。粘土で七輪を造っています。１日40個から50個造るそうです。この七輪はその後の旅の途中で何度も見かけました。

1個7ドルくらいだったと思います。欲しかったけど大きすぎるし重たすぎます。ベトナムを旅する度にいろいろな場所で見掛けますが、この時のことを思い出します。

巨大なお煎茶の涼炉のようにも見えます。

お昼は別々ですと言われたけど、そんなこと言わないでと３人で海鮮鍋を食べました。勿論七輪は先ほど見たものと一緒でした。ニャチャンの近くと言う以外どこだか分からないカイ川沿いのテラスレストランで、暑さと湿気のなかベトナム人のおじさんと女の子と3人で鍋をつつくと言うのは不思議な体験でした。何故か昔観た大林宜彦監督の映画「異人達との夏」を思い出しました。風間杜夫が亡くなった両親とすき焼きを食べるシーンと重なりました。

時間があるのでタップバーの泥温泉にも立ち寄ってもらいました。水着も持ってきていなかったし二人を待たせるのも気が引けたので見学だけで風呂には入りませんでした。その後有名になってテレビでも紹介されていたので入ってくればよかったかなと思います。

クルーズの後ムンさんに「今日はこれで終わりだし時間があるのでどこか案内しますよ。」と言われ彼女のバイクでドライブすることにしました。

まずはニャチャンの市場に連れて行ってもらいました。市場の周りはバスの乗降場になっていましたが、タイヤを見ただけで険しい山の中へ向かう事が想像できます。

つい乗ってみたいと言う気持ちが頭をもたげます。この後に大聖堂に連れて行ってもらいました。

大聖堂から海岸線に出て、二人でしばらく散歩しました。

旅行会社の事や将来に話などを聞かせてもらいました。なんかデートみたいな感じがして、このままニャチャンに骨を埋めるかなんて妄想が浮かんできます。

この辺りはホテルも少ないので観光役よりも地元の子供で溢れていました。

そろそろホテルに送ってもらいましょう。ムンさんはシンカフェの近くの旅行会社で働いているので、翌日チェックアウトした後の荷物を預かってもらうことにしました。そしてホイアン行の夜行バスの予約もお願いしました。

3泊したニャチャンの旅ももう終わりです。ホテルをチェックアウトして荷物を旅行会社に預けて、ホイアン行きのバスの来る夕方まで海岸で海水浴にしました。飲み物１杯でデッキチェアが使えるローザンヌという店にしました。ビール１杯で夕方までデッキチェアが使えてシャワーと更衣室まであるので便利でした。

ビール片手に音楽を聴きながら贅沢な時間が過ぎてゆきます。生ビール1杯2ドルくらいだったと思います。

ニャチャンの海はあまりにもきれいでした。暑くなると海に入ってクールダウンを繰り返していました。

本当はいけないけど何度も行ったり来たりするおばさんからカニを買いました。25センチくらいの団扇海老にワタリ蟹などお盆に大盛りで５ドルでした。最初は「衛生的に問題あるんじゃない？」なんて言っていた弟も、少し口にしたら無口になり二人で満腹になりました。ビールお替りです。

おばさんに天秤棒を持たせてもらいました。肩に食い込むくらいの重さです。これを持って足元の悪い砂浜を一日中歩いているのは大変だと思いました。

最後に記念写真を撮ってニャチャンの旅は終わりです。シャワーを浴びて着替えて夜行バスに備えます。ムンさんにお別れをしてバスを待ちます。最後尾に席が取れたので横になって寝ることが出来たのがラッキーでした。