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CapeTown, Bloomfontein, Johannesburg, 2度訪問、 初めて強盗にあった町ヨハネスブルグJNB。白昼で人通りのある大きな道でのことだ。アパルトヘイト廃止後国内外から職を求めて黒人が殺到、そのままスラム化。白人は郊外へ移住してしまい、アジア人が歩くだけでも異常に目立つ。殺気立った黒人が路上でかたまっているアフリカ三大凶悪都市(他はナイロビ・ラゴス)のなかでも群を抜いて緊張感がある。地球上で、戦場以外でもっとも危険な場所かもしれない。北斗の拳の世界が実在することに衝撃を受けた。<br />私はアフリカの国々、アフリカの人々、アフリカ固有の文化が大好きだ。そのためアパルトヘイトを長年実施してきた同国の白人に対してはいい印象を持てるはずも無かった。しかし、実際この国を旅して気がつくのは、この国の白人は日本人の私に対して大変友好的だったということ。そんな彼らが長年にわたり黒人を差別してきたのは何故なのか、大いに考えさせられた。また、実際に集団に取り囲まれてみて、どんな気分で日常生活を送っているかという事情も無視し得ないと感じた。決して差別を肯定するわけではないが、「差別はよくない」と幾ら主張してみたところで、この国の抱えている諸問題を解決したり人種間の対立を埋めることは困難だということだけはおぼろげに理解できた。<br /><br />*今振り返えって見る「アパルトヘイト」<br />黒人の男女の集団が、軽快なステップを踏んで前進していく。赤土の未舗装の道を、歌いながら、踊りながら。一見アフリカ各地で見られる普遍的な光景だ。ただ一点違っているのは、集団に加わっている人々の表情に笑顔が無く、ちっとも楽しそうではないという点だ。集団は進んでいく。赤土の道を。そして集団は小さな家の前にたどり着いた。<br />ここで集団は突如暴徒となり、何かわめき散らしながら、窓を割り、家を叩き壊している。いったい何が起きたのだろうか。そうか、アパルトヘイトへの反発で黒人を差別してきた白人の家庭を襲っているのだ。長年蓄積された怒りが爆発したのだろう。<br />ところが、家の中にいたおびえた表情の女性は、白人ではなかった。少しやせた、どこにでもいそうな黒人のおばさんだ。必死に首を振り何かを否定しようとている。白人の愛人となっていた黒人女性だろうか。黒人仲間を裏切って白人に寄り添ったことがいけなかったのか。<br />見守っていると今度は家の中から男が引きずり出された。18-9歳だろうか。こちらも白人ではなく黒人だった。いったいどうしたことだろう。猫背になり頭を抱える男に対して、集団の男女は襲い掛かる。石で殴り、そしてナイフで切りつけている。やがて男はぐったりとなり、罵声はやんだ。<br />これは、アパルトヘイト全盛期の頃に撮影されたBBCのドキュメンタリーの一場面だ。いったいなぜ黒人同士で殺しあっていたのか。白人対黒人の問題であるはずのアパルトヘイトとどう関係があるのか。<br />南アフリカ出身の黒人の教授が謎解きをしてくれた。実は殺された男は黒人でありながら白人のために、スパイ行為を働いていたのだ。アパルトヘイト政策を助長するためにスパイを働くなんていったらいかにも卑怯な奴だと思うかもしれない。けれど男だって心情的にアパルトヘイトに賛成していたわけではないのだ。白人政府の手先となって黒人の活動家を監視するために、彼は金で買われたのだ。アパルトヘイト時代の黒人にはまともな就職口など無かった。男にしてみれば食っていくためにやむをえなかったのかもしれない。それでも彼がスパイであることが発覚した以上は、見せしめのためにもリンチの対象としなければならない。そういうシーンを捉えた映像だったのだ。<br />スイスから来た留学生が顔を覆って泣いていた。戦争でもないのに人が殺されていくシーン。私も非常にショックだった。裁きが白人に向かうことなく弱者である黒人同士に向かったということが、その裁きの手段が凄惨で容赦ないものだったことが、そしてなによりリンチ殺人の現場を誰も止めることなくカメラがまわっているという事実が。

South Africa

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1998/12 - 2004/01

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km777

km777さん

CapeTown, Bloomfontein, Johannesburg, 2度訪問、 初めて強盗にあった町ヨハネスブルグJNB。白昼で人通りのある大きな道でのことだ。アパルトヘイト廃止後国内外から職を求めて黒人が殺到、そのままスラム化。白人は郊外へ移住してしまい、アジア人が歩くだけでも異常に目立つ。殺気立った黒人が路上でかたまっているアフリカ三大凶悪都市(他はナイロビ・ラゴス)のなかでも群を抜いて緊張感がある。地球上で、戦場以外でもっとも危険な場所かもしれない。北斗の拳の世界が実在することに衝撃を受けた。
私はアフリカの国々、アフリカの人々、アフリカ固有の文化が大好きだ。そのためアパルトヘイトを長年実施してきた同国の白人に対してはいい印象を持てるはずも無かった。しかし、実際この国を旅して気がつくのは、この国の白人は日本人の私に対して大変友好的だったということ。そんな彼らが長年にわたり黒人を差別してきたのは何故なのか、大いに考えさせられた。また、実際に集団に取り囲まれてみて、どんな気分で日常生活を送っているかという事情も無視し得ないと感じた。決して差別を肯定するわけではないが、「差別はよくない」と幾ら主張してみたところで、この国の抱えている諸問題を解決したり人種間の対立を埋めることは困難だということだけはおぼろげに理解できた。

*今振り返えって見る「アパルトヘイト」
黒人の男女の集団が、軽快なステップを踏んで前進していく。赤土の未舗装の道を、歌いながら、踊りながら。一見アフリカ各地で見られる普遍的な光景だ。ただ一点違っているのは、集団に加わっている人々の表情に笑顔が無く、ちっとも楽しそうではないという点だ。集団は進んでいく。赤土の道を。そして集団は小さな家の前にたどり着いた。
ここで集団は突如暴徒となり、何かわめき散らしながら、窓を割り、家を叩き壊している。いったい何が起きたのだろうか。そうか、アパルトヘイトへの反発で黒人を差別してきた白人の家庭を襲っているのだ。長年蓄積された怒りが爆発したのだろう。
ところが、家の中にいたおびえた表情の女性は、白人ではなかった。少しやせた、どこにでもいそうな黒人のおばさんだ。必死に首を振り何かを否定しようとている。白人の愛人となっていた黒人女性だろうか。黒人仲間を裏切って白人に寄り添ったことがいけなかったのか。
見守っていると今度は家の中から男が引きずり出された。18-9歳だろうか。こちらも白人ではなく黒人だった。いったいどうしたことだろう。猫背になり頭を抱える男に対して、集団の男女は襲い掛かる。石で殴り、そしてナイフで切りつけている。やがて男はぐったりとなり、罵声はやんだ。
これは、アパルトヘイト全盛期の頃に撮影されたBBCのドキュメンタリーの一場面だ。いったいなぜ黒人同士で殺しあっていたのか。白人対黒人の問題であるはずのアパルトヘイトとどう関係があるのか。
南アフリカ出身の黒人の教授が謎解きをしてくれた。実は殺された男は黒人でありながら白人のために、スパイ行為を働いていたのだ。アパルトヘイト政策を助長するためにスパイを働くなんていったらいかにも卑怯な奴だと思うかもしれない。けれど男だって心情的にアパルトヘイトに賛成していたわけではないのだ。白人政府の手先となって黒人の活動家を監視するために、彼は金で買われたのだ。アパルトヘイト時代の黒人にはまともな就職口など無かった。男にしてみれば食っていくためにやむをえなかったのかもしれない。それでも彼がスパイであることが発覚した以上は、見せしめのためにもリンチの対象としなければならない。そういうシーンを捉えた映像だったのだ。
スイスから来た留学生が顔を覆って泣いていた。戦争でもないのに人が殺されていくシーン。私も非常にショックだった。裁きが白人に向かうことなく弱者である黒人同士に向かったということが、その裁きの手段が凄惨で容赦ないものだったことが、そしてなによりリンチ殺人の現場を誰も止めることなくカメラがまわっているという事実が。

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  • JNB(DownTown):<br />強盗にあって以来JNBダウンタウンには近寄らないようにしていた。JNBでは、襲撃を恐れてタクシーの運転手も信号無視連発。私がMAPUTOからの最終バスを乗り過ごし国境から好意で乗せてもらった回送バスの運転手は、夜は(危なくて)市内に入れないといい、当然のように郊外のレストランの駐車場で仮眠。同様に仮眠を取っている車が多数駐車していた。朝になってやっと市内に。写真のように一件平和そうだが、ずっと寝ていてくれよと思わせる路上生活者が列を成して寝ていた(しかも若者多し、黒人ばかり)。何かで読んだが、外国人は毎日必ず殺され、うち多くの場合アメリカ人が含まれるので、大使館の駐在員が、遺体搬送や遺族との連絡のため、JNB空港に常勤しているらしい。前回訪問時たまたま読んだ新聞は一年間の凶悪犯罪のダイジェストかと思うほど、一日に起きる事件が深刻。病んだ町だ。

    JNB(DownTown):
    強盗にあって以来JNBダウンタウンには近寄らないようにしていた。JNBでは、襲撃を恐れてタクシーの運転手も信号無視連発。私がMAPUTOからの最終バスを乗り過ごし国境から好意で乗せてもらった回送バスの運転手は、夜は(危なくて)市内に入れないといい、当然のように郊外のレストランの駐車場で仮眠。同様に仮眠を取っている車が多数駐車していた。朝になってやっと市内に。写真のように一件平和そうだが、ずっと寝ていてくれよと思わせる路上生活者が列を成して寝ていた(しかも若者多し、黒人ばかり)。何かで読んだが、外国人は毎日必ず殺され、うち多くの場合アメリカ人が含まれるので、大使館の駐在員が、遺体搬送や遺族との連絡のため、JNB空港に常勤しているらしい。前回訪問時たまたま読んだ新聞は一年間の凶悪犯罪のダイジェストかと思うほど、一日に起きる事件が深刻。病んだ町だ。

  • CapeTown: 風光明媚なTable Mountain

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  • JNB にもユダヤ教寺院

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この旅行記へのコメント (2)

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  • ぶうちゃんさん 2008/11/24 13:09:37
    こんにちは
    こんにちは。
    美しい街の景色の中には悲しい歴史が残っていたのですね。
    アパルトヘイト・・・・言葉しか知りませんでしたが、主従関係が崩れたときの悲劇は何処にでも起きるのですね。
    主従関係ではありませんが太平洋戦争終了後の中国等でも同じようなことがあったようですね。
    やはり物事きれいごとだけでは片付かないものですね。

    km777

    km777さん からの返信 2008/11/24 17:51:05
    RE: こんにちは
    ぶうちゃんさん

    こんにちわ

    アパルトヘイト時代に白人側に情報提供していた黒人が、アパルトヘイト廃止後に黒人からリンチにあって殺されたことは衝撃的ですが、今も同様のことが世界で起きています。今日の朝刊でも、イランで敵国に対するスパイ行為を行っていたとしてイラン人が処刑されたと報道されています。。http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2008/11/24/20081124ddm007030183000c.html
    ナチスメンバーやその協力者に対する訴追や責任追及は今でもドイツやその周辺国で行われているし、韓国でも日本軍に協力的だった韓国人が最近でもつるしあげにあっていますね。

    ぶうちゃんさんの旅行記見せてもらいました。オーロラ好きなのですね。フィンランドにわざわざ行ってオーロラを見れなかったということ。気持ちわかります。僕も去年アラスカフェアバンクスまでいってオーロラを見れなかったので・・・

    ではまた。
    km

    > こんにちは。
    > 美しい街の景色の中には悲しい歴史が残っていたのですね。
    > アパルトヘイト・・・・言葉しか知りませんでしたが、主従関係が崩れたときの悲劇は何処にでも起きるのですね。
    > 主従関係ではありませんが太平洋戦争終了後の中国等でも同じようなことがあったようですね。
    > やはり物事きれいごとだけでは片付かないものですね。

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