【山東省】 泰山 * 世界遺産(複合遺産)に遊ぶ:彷徨人さんの旅行ブログ
石段に おのが影追う 登山杖
“泰山鳴動して鼠一匹“という諺は,子供の時から、なんとなく知っていた。その泰山と言う山が、山東省のほぼ中央、孔子の故郷曲阜のとなりの泰安と言う町に所在すると言うことや、泰山が中国五岳の一つの東岳であり、古来始皇帝、後漢の光武帝、唐の玄宗、清の康熙帝などがこの山に登り,封禅の儀式を行ったところだと言うことは、中国に旅するようになって知ったのである。
今年の8月15日には、小泉総理は必ず靖国神社に参拝するであろうと言う噂が飛び始め、そうなれば反日デモは止めようもないとの王毅大使の講演会での発言を気にしながら、炎天の日上海に向かった。四万十流しの鮎のごとく、一日上海流しの倭人となれば、それなりに中国の街に染まっていくのだ。翌日山東省の省都済南に飛行機で向かい、その日は、泰山の麓の泰安の町に泊まったのだが、夕方に、歴代皇帝の多くが封禅の儀式を行った泰山の麓にある岱廟に出かけた。ここは、歴史のある建物や石碑などがあちこちにある広大な敷地であり、見学には、一日は掛かるだろうと言われたが、その見学も暑さのため1時間ほどで切り上げ、木陰で涼みながら、行き交う人々の観察をしていた。
泰山の石段は、一天門から7,000余段あると言われているが、僕は、体力を考え、この中天門から頂上の玉皇頂までの約5,000段の石段を登ることにした。翌日、まず麓の登山口に行き、泰山の入山料、大人120元を支払い、まずは、バスで中天門に行き、そこから石段を登り始めた。実は中国に来るといつも思うのだが、一段の階段の高さが日本と微妙に異なるのか,良く躓くのである。ここでも早速躓き、思い余って杖を購入した。初めての杖突登山は予想外に快適であり、確かに安全なのである。杖を突きながら、気温34度の中を、時に20段上がっては一休みし、始皇帝が雨宿りしたために、官位五大夫を戴いた松の下での暫しの休憩、そして急勾配の十八盤では一段上がっては一休みしていたら、後から元気な若者が腰を支えるように押してくれ、やっと南天門にたどり着いた。そこで少し休憩しながら、彼の話を聞いていた。青年はこの麓の農家出身の20歳(数え)の孫吉招君で、この7月に重慶大学の美視電影学院に、定員10人の難関を突破し、お母さんと一緒に、道教の霊地でもある泰山に、合格のお礼に登山をしていたのだ。やがて質素な身なりだが、日焼けした顔に笑みを湛えた母親が、我々のほうを見ながらゆっくりと登ってきた。嬉しそうに話す息子自慢はとても清清しく聞くことが出来た。今度は重慶で会いましょうと約束して分かれた。その日は頂上到着後、山上のホテルで宿泊し、翌朝4時に起き、ご来迎を見に日観峰に向かったのだが、生憎と雲が厚く、この日のご来迎は諦めざるを得ず、後はロープウェイで一気に下山することにした。
午前9時の威海行きの長距離バスに乗り、山東平野を延々と走り続けるのだが、途中僅かな休憩に軽い食事を取ったり、時に転寝したり、日記を書いたりしながら、午後5時過ぎに、やっと黄海に面する山東半島の先端にある軍港でもある威海の町に到着した。
実は、天台宗延暦寺第三代座主慈覚大師円仁の中国での足跡に出会ったのは、山西省の五台山の竹林寺が初めてであった。何故五台山に、日本僧の記念館があるのかは、その時は、実は良く分からなかったのだ。その後、円仁さんの中国滞在日記である『入唐求法巡礼行記』の、ライシャワー版を読んだら、彼の跡を、更に辿ってみたくなり、これまでに揚州、西安、太原、そして河北、河南省のあちらこちらを歩いてきた。
円仁は、838年に短期留学の還学僧として、遣唐使の一員で中国に渡ったのだが、短期滞在の円仁が法を犯して中国に留まり、師最澄の果たせぬ無念を思いながら、山東省威海にある赤山法華院に密かに留まり、そこから9年間にわたり、各地のお寺や佛蹟の巡礼を続けた。帰国するに当たって、再びこの寺に滞在し、847年この威海の町の赤山浦から日本に戻っている。
黄海に面する入江を見下ろす高台に、円仁の日記に基づき再建された赤山法華院の、予想外の大きさには驚かされた。ここも、当然に日本の延暦寺が、何かと配慮しているのであろう。境内は今は盛りの夏花の輝きにあった。
百日白 煙るがごとき 凪の寺
慈覚大師円仁は唐朝武帝の仏教弾圧の時期に直面し、時の政治と官僚の融通の無さに悩まされたが、庶民の分け隔て無き温かさに励まされながら,9年余の中国巡礼を続けることができたのだろう。今のこの日中関係を、是非彼に聞いてみたいような気がするのだが。
年末に、京都の比叡山の麓に当たる紅葉の名所である赤山院を訪れた。円仁さんの隠居所といわれたところであるが、地味で質素な静かな佇まいに、気持ちがとても穏やかになっていくのを感じていた。(第39回)
表紙の写真:麓の登山口であるバスターミナルから眺める泰山

彷徨人さん、こんにちは。
成山頭、私が山東省煙台に55日間の出張をした折、休日に思い立って訪れた場所です。山東省の東の端っこに行こうと決めて、威海へそしてバスを乗り換えて訪れたのでした。
威海の赤山法華院は知りませんでした、機会があれば訪れてみたく思います。
慈覚大師円仁、私が学生時代に入り浸っていた場所でよく聞いた名前です。
京都市左京区の戸寺にYHがあり、そこに100泊程度しました。
京都の庭園や仏像その他を見ながら、天台宗の僧の方々からお話を聞いていました。
四季折々の京都も楽しんだものでした。
昔々のお話です。
彷徨人さんの旅行記、とても興味があります。
また来ます。

私のブログへお出でいただき、ありがとうございます。
円仁座主の中国での9年間の足跡を訊ねようと思ったのは、もう随分前のことですが、以前は旅する時間がうまくとれず、未だほんの僅かな地点しか訊ねることが出来ません。これからは時間があれば、と言うより、時間を割いて、円仁さんの追っかけを引き続きしたいと思っています。
特に、山東省は、円仁さんが長くいたところでもありますし、五台山に行くために、山東省のあちらこちらを旅されておられますので、お仕事による疲れを癒す為にも、お出かけになられると、きっと面白いかと存じます。ひょっとして旅先のどこかでお会いすることになるかもしれませんね。
これを機会によろしくお願いいたします。
彷徨人
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